デイトレ.jp
デイトレ.jp

スキャルピングとは?1ティックの値幅を円に換算し、必要な勝率を計算する

by デイトレ.jp 編集部

スキャルピングの説明は「数秒から数分で小さな利幅を取る」で終わりがちですが、その小さな利幅は自分で決められる数字ではありません。取れる最小の値幅は東証の呼値の単位で決まっていて、そこから手数料と税金を引いた残りが手取りです。この記事では用語集の定義を確認し、1ティックを円に換算して、損益が0になる勝率を計算します。

スキャルピングの定義

野村證券の証券用語解説集は、スキャルピング(すきゃるぴんぐ)をこう説明しています。分類は「金利・為替」です。

数秒から数分程度の極端に短い時間に、何度も売買を繰り返して利益を積み重ねるトレード手法。英語のscalpには「頭皮を剥ぐ」という意味もあり、薄い皮を何枚も剥ぐように、わずかな利幅を狙った細かい取引によって薄い利益を蓄積していく。一つの利益が小さい分、損失も小さくなることが利点だが、取引回数が多いため売買コストがかかり、誤発注が増える可能性もある。

この定義に、手法の性質がほぼ全部入っています。

  1. 時間軸は数秒から数分
  2. 何度も売買を繰り返す
  3. 1回の利益が小さいかわり、1回の損失も小さい
  4. 欠点は売買コストと誤発注

3と4は同じコインの裏表です。1回の値幅を小さくすると、1回あたりの固定費(手数料・スプレッド)の比重が上がります。以下はこの比重を数字で出していきます。

1ティックはいくらか

利幅の最小単位は、注文できる値段の刻み=呼値の単位です。日本取引所グループの説明では、

売買の注文をする際の値段の刻みを呼値の単位といいます。呼値の単位は、売買の対象となる銘柄及びその値段の水準に応じて、以下の表のとおりです。

とされ、値段の水準と銘柄の区分で決まります。デイトレードで扱う価格帯を抜き出すと次のとおりです。

値段の水準TOPIX500構成銘柄その他の銘柄
1,000円以下0.1円1円
3,000円以下0.5円1円
5,000円以下1円5円
10,000円以下1円10円
30,000円以下5円10円

同じ価格帯でも、TOPIX500構成銘柄とその他の銘柄で刻みが最大10倍違います。これを100株単位で円に直します。

株価区分1ティック100株での1ティック株価に対する比率
900円TOPIX500構成銘柄0.1円10円0.0111%
900円その他の銘柄1円100円0.1111%
1,500円TOPIX500構成銘柄0.5円50円0.0333%
1,500円その他の銘柄1円100円0.0667%
4,000円TOPIX500構成銘柄1円100円0.0250%
4,000円その他の銘柄5円500円0.1250%

900円の銘柄を100株買う(約定代金9万円)とき、TOPIX500構成銘柄なら1ティックは10円です。往復の手数料が100円かかる口座なら、10ティック動かないと手数料を回収できません。一方で同じ900円でもその他の銘柄なら1ティックが100円なので、1ティックで手数料ぶんになります。

刻みが細かいほうが「不利」というわけではありません。刻みが細かい=同じ値段により多くの注文が並べられるので、指値が約定しやすい側面があります。ここで言えるのは、1ティックの円換算を知らないとコストとの比が出せないということです。

刻みは2027年3月に変わる

日本取引所グループは呼値の単位の見直しを公表しています。

2027年3月1日からは現行の指数区分(TOPIX500構成銘柄)に基づく呼値の単位の設定から、銘柄ごとの流動性(流動性指標としてSTR(Spread to Tick Ratio)を用います。)に基づき適用する呼値の単位を決定する制度に変更します。

上の表は現行の制度のものです。制度が変われば、同じ銘柄の1ティックが変わり、手法の前提になっている「利確◯ティック」の円換算も変わります。

損益が0になる勝率

利確幅と損切り幅を決めると、必要な勝率は計算できます。利確をWティック、損切りをLティック、往復のコストをCティックとすると、期待値が0になる勝率 p は

p =(L + C)÷(W + L)

です(p×W −(1−p)×L − C = 0 を解いたもの)。コストもティック単位に換算して入れています。

利確損切り往復コスト必要な勝率
1ティック1ティック050.0%
1ティック2ティック066.7%
2ティック2ティック050.0%
3ティック2ティック040.0%
2ティック2ティック1ティック75.0%
3ティック2ティック1ティック60.0%
1ティック1ティック1ティック100.0%

最後の行が、スキャルピングでコストが効く形をそのまま表しています。利確1ティック・損切り1ティックという対称な取引に、往復1ティックぶんのコストが乗ると、必要勝率は100%です。全勝しても損益が0なので、この組み合わせは成立しません。

コストを1ティック未満に収める(手数料0円の条件に入る)か、利確幅を損切り幅より大きくするか、どちらかが必要になります。定義が言う「一つの利益が小さい分、損失も小さくなることが利点」は、コストが0ならそのとおりですが、コストが1ティックあると利点のほうだけが先に消えます。

回数を増やしても、1回あたりの不利は薄まらない

「数をこなす」ことでコストが相対的に下がると考えがちですが、手数料は1回ごとに発生するので、回数に比例して増えます。

  • 1ティック100円の銘柄を100株、1日20往復
  • 往復の手数料が100円の口座 → コストは1日 2,000円=1ティック×20回ぶん
  • 勝率50%・利確1ティック・損切り1ティックなら、手数料前の期待値は0円。手数料を引くと −2,000円

回数を増やすと、期待値が0の取引から確実に増えるのはコストのほうです。野村證券の用語集が欠点として「取引回数が多いため売買コストがかかり」と書いているのは、この比例関係のことです。

税金は利益にだけかかる

利益が出た場合、申告分離課税で20.315%です。1万円の利益なら税は2,032円で、手取りは7,968円です(デイトレードの税金)。損失が出た年は税がかからない代わりに、損失そのものは戻りません。必要勝率の計算は税引き前の損益で行い、残った利益から税を引く順番になります。

手数料のほうは、口座とコースで0円になる条件があります(デイトレの手数料無料を比較)。上の表で「往復コスト0」の行が使えるかどうかは、この条件に入っているかで決まります。

板と約定の仕組みから来る制約

指値は時間優先で並ぶ

東証の売買は価格優先・時間優先の原則で動いています。東証の説明では、

時間優先の原則とは、同じ値段の呼値については、呼値が行われた時間の先後によって、先に行われた呼値が後に行われた呼値に優先するという原則です。

とされています。同じ値段に並んでいる注文のうち、後から出した注文は前の注文が全部約定したあとに回ってきます。1ティックの利幅を指値で取ろうとすると、「その値段に自分より前に何株並んでいるか」が約定するかどうかを決めます。数秒単位の手法では、この順番が利幅そのものと同じくらい効きます。

成行にすれば約定はしますが、東証の説明どおり成行は指値に優先して約定するため、自分が想定した値段とは限りません。1ティックを取る取引で1ティック不利に約定すると、その1回の損益は反転します。

急変時は即時に約定しない

東証は、直前の価格から一定の値幅を超える水準でしか売買が成立しない場合、即時に約定させず特別気配を表示します。更新値幅は気配値段の水準で決まっていて、1,000円未満なら上下15円、1,500円未満なら30円です。値段が走っている局面では、注文を出しても約定せずに気配だけが更新されていく時間があります。

1日の持ち時間は330分

日本取引所グループの用語集では、現物市場の立会時間は「9時から11時30分及び12時30分から15時30分」で、合計330分です。注文受付は前場が8時から、後場が12時5分からです。

区分立会時間注文受付
前場9:00–11:30(150分)8:00–
後場12:30–15:30(180分)12:05–

数秒から数分の取引を繰り返す手法では、この330分がそのまま1日の上限です。1回の取引に平均3分かかるとすれば、理屈のうえでの上限は110回で、そのすべてにコストが掛かります。

現物の回転には制限がある

同じ資金で同じ銘柄を1日に何度も現物で売買すると、差金決済に該当する取引として証券会社側で制限されることがあります。回転させる前提なら、口座ごとの扱いを証券会社のヘルプで確認することになります。信用取引のうち、返済期限が当日の一日信用取引はデイトレード向けに作られた制度です(一日信用取引とは)。信用取引そのものの仕組みは信用取引とはにまとめています。

検証していないこと

  • スキャルピングが利益を生むかどうかは検証していません。この記事が計算したのは「損益が0になる勝率」までで、実際にその勝率が出るかは別の問題です
  • どの銘柄が向いているか、何分足を見るべきかといった選び方は扱っていません
  • 必要勝率の表は、利確幅・損切り幅・コストが毎回同じという前提での計算です。実際には約定値段がずれるため、WとLは回ごとに変わります
  • 上の数字は現行(この記事の公開時点)の呼値の単位の表に基づく計算です。2027年3月1日からの新制度での刻みは銘柄ごとの流動性で決まるため、銘柄別の値は取引所の公表資料で確認が必要です

まとめ

  • スキャルピングは「数秒から数分程度の極端に短い時間に、何度も売買を繰り返して利益を積み重ねるトレード手法」(野村證券)。欠点として売買コストと誤発注の増加が同じ定義に書かれている
  • 取れる最小の利幅は呼値の単位で決まる。1,000円以下ならTOPIX500構成銘柄0.1円・その他の銘柄1円で、100株なら10円 対 100円
  • 必要勝率 =(損切りティック + 往復コストティック)÷(利確ティック + 損切りティック)。利確1・損切り2・コスト0で66.7%、利確2・損切り2・コスト1で75%
  • 利確1ティック・損切り1ティックに往復1ティックのコストが乗ると必要勝率は100%=成立しない
  • 回数を増やしてもコストは回数に比例する。1ティック100円を100株で1日20往復・往復手数料100円なら、コストだけで2,000円
  • 利益には20.315%の税。1万円の利益で税2,032円
  • 1日の立会時間は330分(前場150分+後場180分)。呼値の単位は2027年3月1日からSTRベースに変わる

この記事は手法の定義と計算の説明で、特定の銘柄や売買手法を勧めるものではありません。計算はいずれも仮定を置いた数値例で、将来の損益を示すものではありません。取引するかどうかはご自身で判断してください。デイトレードの始め方はデイトレードのやり方・始め方にまとめています。

よくある質問

Q. スキャルピングとは何ですか?

A. 野村證券の証券用語解説集では「数秒から数分程度の極端に短い時間に、何度も売買を繰り返して利益を積み重ねるトレード手法」と説明されています。英語のscalpに「頭皮を剥ぐ」という意味があることから、薄い利幅を狙った細かい取引で利益を積み上げることを指します。同じ用語集は欠点として「取引回数が多いため売買コストがかかり、誤発注が増える可能性もある」ことを挙げています。

Q. 1ティックはいくらですか?

A. 東証の「呼値の単位」で決まっていて、銘柄と株価の水準で変わります。1,000円以下ならTOPIX500構成銘柄は0.1円、その他の銘柄は1円です。3,000円以下ならTOPIX500構成銘柄は0.5円、5,000円以下なら1円(その他の銘柄は5円)です。100株単位で売買するなら、1ティックの損益は0.1円刻みの銘柄で10円、1円刻みの銘柄で100円になります。

Q. スキャルピングで必要な勝率はどれくらいですか?

A. 利確幅と損切り幅、往復コストが決まれば計算できます。利確をWティック・損切りをLティック・往復コストをCティックとすると、損益が0になる勝率は(L+C)÷(W+L)です。利確1ティック・損切り2ティック・コスト0なら66.7%、利確2ティック・損切り2ティック・コスト1ティックなら75%です。コスト1ティックで利確も損切りも1ティックなら必要勝率は100%で、この組み合わせは成り立ちません。

Q. スキャルピングは手数料無料の口座なら有利ですか?

A. 往復の売買手数料が0円なら、上の式のCのうち手数料ぶんは0になります。ただし現物取引・信用取引それぞれに0円の条件があり、約定代金の帯や1日の合計で変わります。また利益には申告分離課税20.315%がかかるため、手数料が0円でも手取りは利益の約8割です。条件はデイトレの手数料無料の比較ページにまとめています。

Q. 1日に何回も売買すると、同じ資金で何度でも取引できますか?

A. 現物取引では、同じ資金で同じ銘柄を1日に何度も売買すると差金決済に該当する取引になり、証券会社側で制限されることがあります。回転させる前提で取引するなら、口座の種類ごとの扱いを証券会社のヘルプで確認する必要があります。信用取引のうち一日信用取引は返済期限が当日のデイトレード向けの制度です。

Q. 呼値の単位は変わることがありますか?

A. あります。日本取引所グループは、2027年3月1日から呼値の単位の決め方を変えると公表しています。現行の指数区分(TOPIX500構成銘柄)に基づく設定から、銘柄ごとの流動性(流動性指標としてSTR=Spread to Tick Ratioを用いる)に基づいて適用する呼値の単位を決める制度に変更されます。1ティックが変われば、同じ手法の利幅とコストの比も変わります。

出典・参考資料

「手法・資金管理」のほかのガイド

あわせて使える計算ツール